月刊「税理」2019年12月号

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2019/12/02 月刊「税理」2019年12月号

国際税務調査への具体的な対応

 

Ⅰ はじめに

ここ数年、中小企業の海外進出が相次いでおり、もはや海外進出は特定の企業だけのものではなく、どの企業にとっても選択肢の一つとなってきています。

海外進出の目的も多様化し、以前は人件費の安い海外に工場を持ち、そこで生産コストを低くするといった製造業が中心だったのに対し、昨今では製造業以外の海外進出も目立っています。

これは、今後の各国の経済成長や市場拡大を見込んで、海外をマーケットとする方向に考え方を変化させてきたものです。

国際税務の世界に目を向けてもOECDにおけるBEPSBase Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移転)行動計画の策定、最終報告書の公表、それに伴う各国税制の改正等、近年、グローバル企業に対する課税制度の見直しの動きが活発化しております。

今後も、グローバル経済が加速するにつれ、国際税務の世界では、日本においても世界においてもどんどん制度が変化していくものと思われます。

日本においては平成21年度税制改正での外国子会社配当の益金不算入制度の創設、それに伴う間接外国税額控除の廃止、平成28年度及び令和元年度税制改正による移転価格税制の大幅な改正、平成29年度税制改正によるタックスヘイブン対策税制の大幅な改正、平成28年度から実施されている外国法人課税の総合主義から帰属主義への移行及びそれに伴う外国税額控除の改正等、制度そのものを変更する改正も含め、近年、活発に改正が行われています。

 

BEPSプロジェクト実施の取組

国際課税制度においては、従来、国際的二重課税の調整が重視されてきましたが、経済のグローバル化が進展する中、一部の多国籍企業グループによる過度な節税行為に対し、国際的に批判が高まっています。

これは、各国の税制や租税条約の違いに着目し、税率の低い国にグループの利益を集中させることで、グループ全体の税負担を最小化するというものです。

問題は、こういった行為が国際間の税制の隙間や抜け穴を利用した過度な節税行為ではあるものの、法に触れる脱税行為ではないところにあります。

しかし、これを放置すれば本来であれば納税されるべき国の税収が著しく浸食されることになり、企業間の課税の公平も著しく歪められることになります。

これに対処するためには、国ごとの税制改正では限界があることは明らかです。

そこで、各国が共通の問題意識を持ち、各国の税制や租税条約の協議を図ることで失われた税収を取り戻し、実際に経済活動を行っている国での課税を実現するため、国際社会が協調し、世界経済及び企業行動の実態を踏まえた国際課税ルールの再構築に取り組む必要がありました。

このような問題意識により、OECD租税委員会においてBEPSプロジェクトが発足しました。

同プロジェクトは失われた税収を取り戻し、実際に経済活動を行っている国での課税を実現することを目的に15の行動計画を含む最終報告書を平成27年(2015年)10月に公表し、現在、合意事項の実施段階に入っています。

BEPSの合意事項については、タックス・プランニングの機会をできるだけ減じるよう、国際的に一貫した実施が重要であり、G20議長国である我が国は、これをG20の国際租税分野における重要課題の一つと位置付けています。

この点は、平成28年のG7G20などの国際会議において継続的にその重要性が確認されています。

本年6月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議における共同声明でも明記されました。

BEPSプロジェクトの取りまとめに当たり主導的役割を果たした我が国としては、引き続き、日本企業の健全な海外展開を支えつつ、変化する経済実態や諸外国における取組も踏まえながら、BEPSプロジェクトにおける国際合意に則った制度整備を着実に進めていく必要があります。

 

Ⅲデジタル経済をめぐる問題

PE認定をめぐる問題は国際税務の基本といってもよい論点ですが、税務調査においては問題となるケースが多々あります。

過去に日本で最も話題となったPE認定に関する事件は通販大手のアマゾンが日本にPEがあるものと認定されて多額の追徴課税を受けた事件です。

日本の物流センターをPEと認定して課税処分を行いましたが、最終的には国税当局が処分の取り消しをしました。

この事件にはPEをめぐる各種の論点があるのですが、この問題の根本は現在の税法体系がデジタル経済を想定していないということに尽きるのではないかと思います。
税法の世界では「PEなければ課税なし」という考え方が昔から存在します。

この考え方は、PE(営業拠点)がなければ課税が困難という現実的な側面のほか、PEがない程度の小規模な事業であれば課税しなくても大きな影響はないという側面からも成り立っていると考えられます。

しかし、インターネットが発達した現在では、恒久的施設という物理的な施設がなくても海外で大量の商品を販売することは可能ですし、わざわざ恒久的施設を設置する必要もありません。
また、実際のモノとしてではなく、データという形式であれば、世界中どこへでも即時に販売することが可能です。

例えば、従来の書籍の場合には書籍というモノの移動がありますが、電子書籍になるとダウンロードという形式での購入になりますので、モノの移動も必要ありません。

また、インターネット上でのプラットフォーム型のビジネスにも物理的な場所が必要ありません。

こういった取引に対して、現在の税法は限界を迎えているといわれています。

サーバーをPEと認定する動きもありますが、今のところ具体的な法令や明確な規定はありません。

日本でも、海外から配信される電子書籍や音楽に対して消費税を課税する改正が発表される等、少しずつデジタル経済に関する税制改正が行われていますが、まだ問題点が十分に解決されているとはいい難い状況です。

イギリスを始めとする各国でデジタルサービス税の導入が検討される等、デジタル経済を取り巻く環境は今後大きく変わっていくのではないかと思います。

 

Ⅳ日本の中小・中堅企業の現状

こうした背景の下、海外進出をした日本の企業が、後日必ず行われる税務調査で予期せぬ多額の追徴課税を受けないようにするためには、事前にどのような点に注意をしておけばよいのか。
多くの企業では、海外進出に当たって進出先の法制度やインフラの整備状況、商慣習などさまざまなリスク要因を分析・検討した上で意思決定を行います。

その中ではもちろん現地の税制も検討の対象となりますが、足元の日本における税務リスクという視点が抜け落ちていることが非常に多いのが実情です。
特に、大企業に比べて人材や経験の乏しい中小・中堅企業が初めて海外に進出するような場合には、日本における税務リスクを明確に認識していないことが多いために、後日、税務調査官の指摘を受けて初めてリスクの存在に気付き、時すでに遅しというケースが少なくありません。

また、オーナー会社がゼロから海外進出する場合には、日本親会社が持っている「ヒト」「モノ」「カネ」のすべての経営資源を投入して、何とか一日でも早く海外事業を軌道に乗せようとするために、本来であれば海外子会社が負担すべきものを日本親会社で負担してしまうなど、税務上、いわゆる「寄付金」課税のリスクが多くなりがちです。

また、「ヒト」の移動が伴う場合は、企業の税務リスクのみならず社員個人の税務リスクにまで及ぶことになります。

近年の海外進出企業の税務調査では、日本親会社と海外子会社との間で行われるこれらの取引について徹底的に厳しい調査が行われる傾向が強くなっています。

このような厳しい税務調査において、企業がまったく予期せぬ指摘を受けないように事前に対策を講じることが必要です。

 

Ⅴ海外関連企業の税務調査

海外と取引のある企業や海外に進出している企業の税務調査の際には、「国際税務専門官」という調査官が帯同することが多くなっています。

国際税務専門官はすべての税務署にいるわけではなく、比較的大規模な税務署に所属し、その周辺地域の管轄税務署の調査官に同行し調査を行うことがあります。

また、最近では管轄内に海外関連取引を行っている企業が多い税務署では一つの部署を国際調査部隊としているところもあります。

国際税務専門官の制度ができた当初は、能力もバラバラで必ずしも優秀でない調査官もいましたが、最近の国際税務専門官は非常に良く教育されており、国際税務で問題となりやすい源泉所得税や消費税等の論点を的確に指摘しています。

それに対して、企業側も顧問税理士とともに対応しますが、国際税務に明るくない税理士の場合には、日常の取扱いの中に明らかな間違いがあったり、資料の整備等の調査の準備ができていなかったり、指摘に対する反論ができなかったりして、調査でたくさんの指摘を受けることが多くなってきています。

国際税務専門官は優秀な人が増えてきたといっても、経験が少ないせいか明らかに間違った指摘をする人もいますので、そういった指摘に対して反論できないと不必要な課税を受けることもあります。
最近では、従来の顧問税理士のほかに国際税務専門の税理士に日々の国際取引のアドバイスを依頼する企業が増えており、調査の場面でも「一般の法人税の対応は顧問税理士」、「国際税務専門官とのやり取りは国際税務専門の税理士」との区分する企業が増えてきました。

 

Ⅵ源泉所得税と税務調査

最近の税務調査で最も指摘が多いのが外国法人や非居住者に対する源泉徴収です。

外国法人や非居住者に対する支払の場合、内国法人や居住者に対する支払よりも源泉徴収しなければならない項目が多くなり、それを認識していないケースや認識していたとしても日本支店に支払う場合に失念してしまうケースもあります。

また、国内法の規定で源泉徴収制度がなかったとしても、租税条約の規定で源泉徴収義務が発生する場合等も源泉徴収漏れが多くなっています。

数年前には、インドへのシステム開発対価の支払いをする場合の源泉徴収漏れが全国規模で一斉に指摘されたケースもありました。

これらの源泉徴収漏れを防ぐには、まずは外国法人や非居住者に対して支払いをする場合には、源泉徴収をする義務があるかもしれないという意識を社内で持つことが重要です。

同じ種類の支払いであっても租税条約によって源泉徴収税率が変更されたり、源泉徴収義務がなくなったりするケースもあります。

国際税務の世界は「知っているか」「知らないか」の世界です。

支払いごとの確認は面倒ではありますが、源泉徴収漏れが発生すると、相手先が返金してくれないこともありますし、不納付加算税も含め思わぬ税額の負担となることがあります。

 

Ⅶ国際税務調査への具体的な対応

国税当局では、国際取引を利用した脱税や租税回避に対しては、税務調査を通じて、事実関係を的確に把握した上、適正な課税を行うことを事務運営の一つとしています。

このため、国際税務専門官の増員やプロジェクトチームの設置など、調査体制の充実を図るとともに、租税条約に基づく情報交換の活用や海外への資金の流れの把握など、あらゆる機会を通じて課税上有効な資料情報の収集に努めています。

また、海外に所在する関連企業との取引価格を通じた移転価格の問題についても、税務調査を通じて対応しているところです。

こうした中で、国際取引を行う企業が税務調査で厳しい指摘を受けないように事前の対策を講じる必要があります。

今回、税務当局の最前線で指揮を執っていた経験と税理士としての立場で、具体的にどのように対応すればよいかを「国際税務調査チェックリスト」としてまとめました。

少しでも実務上の参考にしていただければ幸いです。

 

 

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