『月刊税理』国際税務支援等リレー連載第35回(2020年11月号)

金森勝税理士事務所

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『月刊税理』国際税務支援等リレー連載第35回(2020年11月号)

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2020/11/03 『月刊税理』国際税務支援等リレー連載第35回(2020年11月号)

中小企業経営者の法人税への対応について

金森 勝(税理士、iTax税理士法人顧問) 

 

1 はじめに

 企業活動の多様化や国際化、働き方改革とコンプライアンスの順守など、社会経済の大きな変革により、法人税に関する規定が年々複雑・難解になっています。

法人税は、複雑で広範な企業活動の結果である企業利益に対して、法人税を的確に課税するため幅広くかつ緻密に規定されており、また、昨今の急速なグローバル化など、常に変化する経済取引等に即応するため、随時整備・改廃が行われています。

本編では、中小企業の経営者の皆様を対象に日常取引に内在する法人税等に係る課税上の制度や留意点を、Q&Aの形式で実務家の視点から解説するとともに、巻末にチェックリストを添付していますので、ご活用ください。

なお、紙面の都合上、基本的な説明に留まりますので、実際の申告に当たっては、税法等を確認するとともに必要に応じて税理士等の専門家に相談されることをお勧めします。

 

2 法人税の対応

1) 法人税の概要

日本の法人税は、昭和15年に法人に対する所得税が分離する形(法人税法の制定)によって成立し、現行の法人税法は昭和40年に制定されています。

法人税は、法人税法の定めるところにより算出された各事業年度の所得(これを「課税所得」又は「課税標準」という。)に一定の税率を乗じて計算します。

この法人税の納税義務者となる法人には各種の法人があり、その法人の種類によって課税所得の範囲が異なっています。

 法人税法は、法人の事業活動によって得た各事業年度の所得の金額を課税標準(対象)とし、株主が払い込んだ資本金等によって法人の正味資産が増えた部分については課税対象とはしないこととしています(法2122)

 法人税の課税標準である各事業年度の所得の金額は、法人税法第22条第1項において「当該事業年度」の「益金の額」から「損金の額」を控除した金額とすると規定しています。

この場合の益金の額は、おおよそ企業会計上の売上高や販売高等の収益の額に相当するものであり、損金の額は、企業会計上の売上原価、販売費、一般管理費等の費用及び損失の額に相当するものです。

元々、法人の利益は公正妥当な会計処理の基準によって計算されるものであり、本質的には企業会計の利益の計算に従えばよいこととしています。

したがって、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」によって会計処理が行われていれば、法人税法は、これを認めることとしています(法22)

 

企業会計の利益    収益の額 - 原価・費用・損失の額 = 利益の金額
法人税法上の所得金額 益金の額 - 損 金 の 額 = 所得の金額

 

法人税法上の所得の金額は、基本的には企業会計上の利益の額に相当するものですが、企業会計上の利益の額がそのまま所得の金額となることはまれです。

企業会計上の利益は、主として企業の財政状態及び経営成績を正しく認識し、配当可能な財源を表示する目的で計算されるのに対し、法人税法上の所得は課税の公平、適正な税負担のための調整等を目的とし、さらに産業政策上の目的を取り入れて計算することとされています。

このため、法人税法には、法人税法第22(各事業年度の所得の金額の計算)の基本的な規定に対する例外規定として、「別段の定め」が設けられています。

したがって、両者の間にはその目的の違いに応じて必然的に差異が生じることとなります。

つまり、企業会計上は収益であっても法人税法上は益金とはしないもの、費用であっても損金とはしないものがあります。

逆に、企業会計上は収益としないものであっても法人税法上は益金とするもの、費用としないものであっても損金とするものがあります。

このことから、企業会計上の利益の額にこの別段の定めによる調整を加えたものが、法人税法上の所得の金額となります。

法人税の課税所得は、企業会計上の利益又は損失を基礎としますが、決算の段階で法人税法の規定を取り入れたり、申告書において法人税法上定められている所要の加算又は減算を行い誘導的に算出されます。

この課税所得の計算過程を「税務調整」といいます。

法人の決算は、会社法等の規定に基づき作成した貸借対照表や損益計算書などの計算書類を株主総会等に提出し、その承認等を得ることによって確定します。

法人の各事業年度の所得の金額の計算は、この法人の確定した決算を重視し、益金や損金に算入するかどうかについて法人の意思に任せている事項があります。

そのため法人税法上では、法人の意思を明らかにさせるため、株主総会の承認等を受け確定した決算において、あらかじめ費用や損失として計上することを条件として損金の額に算入するという規定があります。

このように、法人の確定した決算において費用や損失として経理することを「損金経理」といいます(法2二十五)。

法人が一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算した利益は、必ずしも法人税法に定める所得の計算規定に従って計算されているわけではないため、これを基礎に法人税法の規定に基づく所要の加算又は減算を行い、各事業年度の所得の金額を求めることとなります。

この「税務調整」には企業会計の決算段階で調整するものと法人税申告書に添付する各種の明細書(別表〇という。)を用いて行うものがあります。

このように法人税は、企業会計上の確定した決算を基に法人税法上の「別段の定め」により課税所得金額等が算出されることに留意する必要があります。

以下、QAの形式で、法人税の制度の概要及び留意すべきポイント等について説明します。

 

2) 法人税対応の留意事項QA

 

Q1 益金の額に算入すべき金額とはどのようなものでしょうか。

 

A1 益金の額に算入すべき金額とは、法人税法の規定や他の法令で「益金の額に算入する」又は「益金の額に算入しない」と定められているもの(別段の定めがあるもの)を除いて、資本等取引以外の取引に係る収益の額とするものとし、その代表的な取引に係る収益の額の例は、次のとおりです(法22②、法222)

 

  • ①商品、製品等の資産の販売による収益の額
  • ②固定資産、有価証券等の資産の譲渡による収益の額
  • ③請負等の役務の提供による収益の額
  • ④無償による資産の譲渡や役務の提供による収益の額
  • ⑤無償による資産の譲受けによる収益の額
  • ⑥その他取引による収益の額

 

これらの取引の例示のうち、④及び⑤は法人税法特有の考え方であるので次のような点に注意を要します。

④は単なる資産の贈与を行っただけであり、何も収益が発生していないと考えやすいのですが、法人税法ではその資産をその時における価額(時価)で売り、その受け取った金銭を直ちに相手方に渡したとみて、時価相当額を収益として益金の額に算入することとしています。

⑤の資産の贈与を受けた場合は、それだけ法人の正味資産が増加するので、その資産の時価相当額を益金として益金の額に算入することとしています。

なお、収益という用語は企業会計でも広く使われていますが、法人税法上の収益には資産の贈与により生ずる収益等が含まれますので、企業会計上の収益と同一のものではなく、その範囲を若干異にしていることに注意を要します。

 

Q2 損金の額に算入すべき金額とはどのようなものでしょうか。

 

A2 益金の額に対応するものとして、法人税法の規定や他の法令で「損金の額に算入する」又は「損金の額に算入しない」と定められているものを除いて、損金の額を次の原価、期間費用及び損失の3種類に区分して規定しています(法22)

 

  • ①収益に対応する売上原価、完成工事原価等の原価の額
  • ②販売費、一般管理費等の費用(償却費を除く)の額
  • ③災害等による損失の額(資本等取引を除く)

 

①の売上原価等とは、商品の売上高に対応する売上原価や譲渡した資産の原価等のことです。

売上原価については、特にその事業年度の収益としたものに対応する原価を計上する「費用収益対応の原則」が重視されています。

したがって、収益に対応する原価について事業年度末までに確定しないものがある場合には、その金額を適正に見積もって損金の額に算入する必要があります(法22③一)

②の販売費、一般管理費、その他支払利息等の営業外費用は収益と個別対応で計算することが困難な費用、いわゆる「期間費用」とされるものです。

これらの費用については、償却費を除いて、その費用が事業年度末までに債務として確定していることが必要です。

したがって、法人が将来発生することが見込まれる費用を任意に見積もって計上しても、法人税法で認められているもの以外は損金の額に算入できません(法22③二)。

③の災害・盗難等の偶発的な原因による損失は、元来、収益や期間の対応になじまないものですから、その事実が発生したときの事業年度の損金の額とすることとされています(法22③三)。

 

Q3 債務の確定とはどのような要件ですか。

 

A3 債務が確定しているかどうかは、その事業年度終了の日までに次の全ての要件に該当するかどうかで判定します(法基通2-2-12)。

 

①その費用に係る債務が成立していること

②その債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が生じていること

  • ③その債務の額を合理的に算定することができること

 

Q4 一般に公正妥当と認められる会計処理の基準とはどのようなことですか。

 

A4 法人税法は、法人の各事業年度の所得の金額の計算に関して、別段の定めによって税法独自の計算方法を定めているもののほかは、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従っていれば、その会計処理を認めることとしています(法22)

ここでいう、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準とは、客観的、常識的にみて規範性があり、公正で妥当と認められる会計処理の基準という意味であり、具体的な明文による基準があることを予定しているわけではありません。

したがって、この基準は「企業会計原則」のみを意味するものでもなく、また、会計処理の実務の中でただ単に慣習として一般に行われているというだけでも足りず、客観的な規範にまで高められた基準といえます。

言い換えれば、法人税法のこの規定は、法人の会計処理において用いている基準ないしは慣行のうち、一般に公正妥当と認められないものについては法人税法においても認めないこととし、それ以外のことについては原則として法人の会計処理を認めるという基本方針を示したものであるということがいえます。

 

Q5 損金経理とはどのようなことでしょうか。

 

A5 法人の決算は、会社法等の規定に基づき作成した貸借対照表や損益計算書などの計算書類を株主総会等に提出し、その承認等を得ることによって確定します。

法人の各事業年度の所得の金額の計算は、この法人の確定した決算を重視し、益金や損金に算入するかどうかについて法人の意思に任せている事項があります。

そのため法人税法上では、法人の意思を明らかにさせるため、株主総会の承 認等を受け確定した決算において、あらかじめ費用や損失として計上することを条件として損金の額に算入するという規定があります。

このように、法人の確定した決算において費用や損失として経理することを「損金経理」といいます(法2二十五)。

 

Q6 税務調整事項とはどのようなことでしょうか。

 

A6 法人が一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算した利益は、必ずしも法人税法に定める所得の計算規定に従って計算されているわけではないため、これを基礎に法人税法の規定に基づく所要の加算又は減算を行い、各事業年度の所得の金額を求めることとなります。

この調整を「税務調整」といい、具体的には企業会計の決算段階で調整するものと法人税申告書に添付する各種の明細書(別表〇という。)を用いて行うものがあります。

この税務調整は、次のように区分されています。

  • ①損金経理等の処理が必要であり、申告書だけで調整ができないもの
  • ②法人の決算における経理処理にかかわらず適用されるが、法人に申告書上で調整するかどうかを任せているもの
  • ③法人が申告書上で調整しなければならないもの

 

税務調整は、①のように確定した決算で法人税法に定められた経理が要求される、いわゆる「決算調整事項」と、②と③のようにその性質上確定した決算における経理を要せず、申告書上で調整を求める、いわゆる「申告調整事項」とに区分することができます。

なお、これらの区分は、法令上体系的に区分されているわけではなく、該当条項に個々に示されている取扱いにより区分されています。

 

Q7 決算調整事項とはどのようなことでしょうか。

 

A7 決算調整事項とは、法人が決算に織り込むかどうかは任意ですが、法人税法の適用を受けるためには、法人の確定した決算で損金経理等の処理をする必要があり、確定申告書上だけで調整することは認められないものをいいます。

例えば、減価償却費の費用配分手続きを全て法人の意思に任せると課税の公平が期せられないため、「法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額のうち、その法人が選定した償却の方法に基づいて計算した金額に達するまでの金額について損金の額に算入する」と規定しています(法31①)。

これは、税法上は常に法人が行った損金経理による償却費を基礎として課税所得の計算上損金の額に算入する金額の判定(限度額の算定)を行うということであり、法人が減価償却費を計上しないものを税務署長が進んで損金算入を行うことは原則としてせず、また、法人が企業会計上何ほどの減価償却をすべきかというところまで介入はしないということです。

 

Q8 申告調整事項とはどのようなことでしょうか。

 

A8 申告調整事項とは、確定申告書の上だけで調整する事項であり、任意の申告調整事項と必須の申告調整事項とがあります。

  • ①任意の申告調整事項

法人の決算上の経理処理に関係なく法人の選択により、法人が自ら確定申告書で調整を行った場合にのみ適用される事項です(法23⑧等)

  • ②必須の申告調整事項

法人が申告調整をしたか、していないかに関係なく、税務上当然に益金不算入、損金不算入等の計算を行い、企業利益を修正しなければならない事項です(法25①等)

 

また、法人の利益計算が事実に基づいていないなど、公正妥当な会計処理の基準に従っていない場合(例えば、売上や費用の計上漏れ又は原価や損失の過大計上があるような場合)にも、申告調整により法人の企業利益を修正しなければなりません。

したがって、法人が申告調整をしていない場合は、税務署長はこれらの事項について更正や決定をしなければなりません。

 

Q9 商品や製品等の販売による収益はいつ計上するべきですか。

 

A9 法人税法では、収益の計上時期について、各法人の任意に委ねるのではなく、課税の公平の観点から統一的に取り扱い、法人が商品等を販売した場合には、その収益の額は、商品等の「引渡しがあった日」に計上することとされています(法222①)。

 

Q10 資産を無償で譲渡した場合は、時価で収益に計上するのでしょうか

 

A10 法人が無償で資産を譲渡した場合には、企業会計では現実には金銭等の授受がないので、これを収益とはしません。

しかし、法人税法では、法人が他の者と取引を行う場合には、全ての資産は、時価によって取引されたものとみなして課税所得を計算するのが原則となっています(法222④)。

したがって、法人の所有資産を第三者に無償又は低廉な価額で譲渡しても、その譲渡によって収入すべき金額は、その法人の収益として益金の額に算入すると同時に、その金額を相手方に対して贈与したものとされ、それによって生じた損失は原則として寄附金となります。

この場合、その相手方が法人の役員又は使用人の場合はその者に対する給与となります(法37⑦⑧、3436)。

 

Q11 資産を無償で譲り受けた場合は、時価で収益に計上すべきでしょうか

 

A11 法人が他の者から資産を無償で譲り受けたり、債務の支払を免除されたりした場合には、法人の純資産がそれだけ増加しますから、その資産を譲り受けた時の時価に相当する金額や免除された債務の金額に相当する経済的利益の額を益金に算入します(法22②)。

 

Q12 受取配当等は益金の額に算入しないのでしょうか。

 

A12 現行税制では、基本的には、法人税は所得税の前払とする法人擬制説の考え方が採られています。

したがって、法人の段階で納付した法人税に相当する金額を、その配当等を受けた個人が納付する所得税額から控除するという仕組みとなっています(配当控除…所法92)

このため、株主である法人が受け取った配当等の額については、益金の額に算入しないこととしています。

 

Q13 資産の評価益は益金の額に算入されますか。評価損は損金の額に算入されますか。

 

A13 会社法や企業会計では資産の帳簿価額は、原則としてこれを取得するために要した金額を基礎とする、いわゆる「取得原価主義」が採られています(会社法431、会規5)

法人税法上も評価換えに基づく課税所得の恣意的調整等が行われる点を考え、法人が資産の評価換えを行い評価益を計上しても、法人税法上は原則として評価換えがなかったものとし、その評価益は益金不算入としています(法25)

また、法人の所有する資産が災害による著しい損傷その他特別の事実が生じた場合など(法33②③④、法令68682)の他は、原則として損金の額に算入しないこととしています(法33)

 

Q14 100%の完全支配関係がある法人間の受贈益は、益金の額に算入されますか。

 

A14 内国法人が各事業年度においてその内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人から受けた受贈益の額は、その受贈益の額を受けた内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入されません(法252)。

この場合の受贈益の額については、法人税法上の寄附金の額の定義と完全に裏表の関係になっています(法252②、③法37⑦、⑧)。

 

Q15 減価償却資産が償却費として損金の額に算入されるのはどのような金額でしょうか。

 

A15 法人税法上、損金の額に算入される償却費の額は、次のうちいずれか少ない金額です。

  • ①償却限度額
  • ②償却費として損金経理した金額

この場合の「償却限度額」とは、法人が選定した定額法、定率法等の償却の方法に基づき、税法で定めるところの耐用年数、残存価額(平成19331日以前に取得した資産に限る。)等を基礎として計算された金額をいいます(法令58)

また、「償却費として損金経理した金額」とは、法人が確定した決算で減価償却費として費用又は損失として経理した金額をいいます(法2二十五)。

したがって、法人が確定した決算で償却費を計上しなかったときは、法人税法上進んで償却費を損金の額に算入することはありません。

また、決算で計上した償却費が償却限度額に満たない場合の不足額(償却不足額)があったとしても、この不足額は損金の額に算入されません。

 

Q16 少額の減価償却資産の損金算入について教えてください。

 

A16 減価償却資産を取得したときには、これを資産に計上し事業の用に供した後に減価償却を行うのですが、次のいずれかに該当するものがある場合は、法人がその取得価額に相当する金額について、その事業の用に供した日の属する事業年度において損金経理したときは、その損金経理をした金額は損金の額に算入されます。

つまり、減価償却資産として資産に計上することを要しないこととなります(法令133)

  • ①その使用可能期間が1年未満であるもの
  • ②その取得価額が10万円未満であるもの

 

Q17一括償却資産の損金算入について教えてください。

 

A17 減価償却資産で取得価額が20万円未満であるもの(上記Q16の適用を受けるものを除く。)を事業の用に供した場合において、その資産の全部又は特定の一部を一括したもの(以下「一括償却資産」という。)の取得価額の合計額をその事業年度以降の各事業年度の費用の額又は損失の額とする方法を選定したときは、その一括償却資産につきこれらの事業年度において損金の額に算入される金額は、その一括償却資産の取得価額の合計額(以下「一括償却対象額」という。)の全部又は一部につき損金経理をした金額のうち、次の算式により計算した金額に達するまでの金額とされています(法令1332)

なお、損金経理をした金額には、一括償却対象額につきその事業年度前の各事業年度において損金経理をした金額のうちその各事業年度の損金の額に算入されなかった金額を含むこととされています(法令1332)

 

(算式) 一括償却対象額 × その事業年度の月数 / 36

 

Q18 中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入について教えてください。

 

A18 措法424③に規定する中小企業者等で、青色申告法人のうち常時使用する従業員の数が500人(令和2331日までは1,000人)以下の法人が、令和4331日までの間に取得等をして事業の用に供した減価償却資産で、その取得価額が30万円未満である少額減価償却資産については、その取得価額の合計額のうち300万円に達するまでの金額は損金算入を認めるという特例措置が講じられています(措法675、措令3928)。

また、有形固定資産だけでなく、ソフトウェアや特許権等の無形固定資産も対象となります。

新品の資産だけでなく、中古資産も同様です。

 

Q19 繰延資産とはどのようなものでしょうか。

 

A19  法人税法上の繰延資産は、法人の支出する費用のうち支出の効果が1年以上に及ぶものをいい、資産の取得価額に算入される費用と前払費用は除かれています。

この支出の効果が1年以上に及ぶ費用には、企業会計における繰延資産も含まれます(法2二十四、法令14)

 

Q20 同族会社とはどのような会社をいうのでしょうか。

 

A20 法人税法では、株主等の3人以下とこれらの株主等と特殊の関係にある個人及び法人がその会社の株式の総数又は出資金額の合計額の50%超を保有している会社を「同族会社」とし(法2十)、非同族会社と区別して特別の規定を設けています。

また、株主等とは、株主又は合名会社、合資会社若しくは合同会社の社員その他法人の出資者をいいます(法2十四)。

 

Q21 同族会社の課税上の特別規定にはどのようなものがありますか。

 

A21 同族会社の課税上の特別規定としては、次のものがあります。

  • ①同族会社の使用人のうち一定の株式を保有している者は、役員とみなさる場合があります(法令7二、71①五)。
  • また、同族会社の役員のうち一定の株式を保有している者は、使用人兼務役員とされない役員となります(法令71①五)。

②同族会社において、法人税の負担を不当に減少させる結果となる行為や計算が行われるときは、正常な取引に置き替えて所得金額が計算され、法人税の課税が行われます。

これが「同族会社等の行為又は計算の否認」です(法132)。

 

Q22 役員の給与はどのような取扱いでしょうか。

 

A22 法人がその役員に対して支給する給与のうち、次の①から③までに掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は損金の額に算入されません(法34①)。

ただし、これらの給与には、債務の免除による利益その他経済的な利益を含み、業績連動給与に該当しない退職給与、及び使用人兼務役員に対して支給する使用人分給与は含まれず、また、不相当に高額な部分の金額及び事実を隠蔽又は仮装して経理することにより役員に対して支給する給与は損金の額に算入されません(法34①②③④)。

  • ①定期同額給与

支給時期が1月以下の一定の期間ごとであり、かつ、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与、その他これに準ずる給与をいいます(法34①一、法令69①)。

  • ②事前確定届出給与

その役員の職務につき所定の時期に①確定した額の金銭等を交付する旨の定めに基づいて支給する給与で、納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する届出をしているものをいいます(法34①二、法令69②~⑧、法規223①)。

  • ③業績連動給与

法人が業務を執行する役員に対して支給する業績連動型給与で一定の要件を満たすものをいいます(法34①三、法令69⑨~⑲、法規223③)。

 

Q23 経済的利益とはどのようなものでしょうか。

 

A23 役員及び使用人(以下「役員等」という。)に対して支払う給与は、現金で支払われるのが通常です。

しかし、法人が役員等に対して有する貸付金等の債権を放棄する場合、あるいは、法人が所有している土地、建物を役員等に対して無償や低い価額で賃貸する場合のように、現金は支払われないが実質的にその役員等に対して給与を支給したのと同様の経済的効果をもたらす利益が与えられる場合があります。

このような利益を一般に「経済的利益」といいます(法基通9-2-9)。

そこで、法人税法上このような経済的利益については、役員の場合であれば、その実態に応じ定期同額給与、臨時的な給与、退職給与に区分し、これを実際に支給した給与の額に含めそれぞれの金額が過大であるか否かを判断することとなります。

また、使用人の場合は、役員と特殊な関係のある使用人について、経済的利益をその実態に応じ給料、賞与、退職給与に区分し、これを実際に支給した給与の額に含めそれぞれの金額が過大であるか否かを判断することとなります。

 

Q24 交際費等とされるものはどのようなものでしょうか。

 

A24 税法上の交際費等の範囲は、社会通念上の概念より幅広く、交際費、接待費、機密費、その他の費用で法人がその得意先や仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものです(措法614)

 

この取扱いを区分して説明すると、次のとおりです。

  • ①交際費その他の費用とは、法人が交際費等の科目で経理したかどうかを問わないこと。
  • ②接待、贈答等の行為とは、もてなし、贈物などのやりとり等の性質を持つ全ての行為をいうこと。
  • ③事業に関係のある者等とは、直接その事業に取引関係のある者だけでなく、間接にその法人の利害に関係のある者及びその法人の役員、使用人、株主等も含まれること(措通614(1)22)。
  • ④支出するとは、支出の事実があったことであり、接待するなどの行為があったことをいいます。
  • したがって、仮払又は未払等の経理をしていなくともその行為があった事業年度の交際費等に含まれます(措通614(1)24)。

 

Q25 交際費等の損金不算入額はどのように計算されるのでしょうか。

 

A25 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人(普通法人のうちその事業年度終了の日において、法人税法第66条第6項第二号又は第三号に掲げる法人に該当するもの(以下、「大法人の子会社等」という。)を除く。)については、定額控除限度額を超える金額が損金の額に算入されません。

定額控除限度額は、年800万円に事業年度の月数を乗じてこれを12で除して計算した金額となります(措法614②)。

なお、接待飲食費の50/100相当額の損金算入と定額控除限度額までの損金算入のいずれかを選択適用することができます(措法614①②)。

 

Q26 寄附金とされるものにはどのようなものがあるのでしょうか。

 

A26 法人税法上の寄附金とは、法人が行った金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与をいい、社会通念上の寄附金の概念よりその範囲は広くなっています(法37⑦)。

法人税法上の寄附金であるかどうかの区別は、個々の実態により判断すべきものですが、この判断の基準として、事業に直接関係ない者に対する金銭でした贈与は、原則として寄附金として取り扱われます。例えば、社会事業団体、政治団体に対する拠金や神社の祭礼等の寄贈金のようなものは寄附金とされます。

 

Q27 貸倒損失が認められる要件はどのようなものですか。

 

A27 貸倒れの事実認定は難しい面もあるため、法人税基本通達において貸倒れの判定に関する一般的な基準が定められています。

  • ①金銭債権の全部又は一部切捨てをした場合の貸倒れ(法基通9-6-1)

イ 金銭債権のうち会社更生法等の法令の規定や関係者の協議決定等により切り捨てられることとなった金額

ロ 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、金銭債権の弁済を受けることができない場合に、その債務者に対し書面により債務免除をした金額

  • ②回収不能の金銭債権の貸倒れ(法基通9-6-2

債務者の資産状況、支払能力等からみて金銭債権の全てが回収できないことが明らかになった場合の、その債権の全額を貸倒れとして損金経理した金額

  • ③一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ(法基通9-6-3

債務者との取引を停止した時以後1年を経過した場合等の、その債務者に対して有する売掛債権(備忘価額を控除した後の金額)を貸倒れとして損金経理した金額

 

Q28 特定同族会社の留保金に対しては特別税率が課されるのでしょうか

 

A28 特定同族会社(資本金の額又は出資金の額が1億円以下である一定の会社及び清算中の会社を除く。)が一定の限度額を超えて各事業年度の所得等の金額を留保した場合には、通常の法人税の他に、その限度額(留保限度額)を超えて留保した所得等の金額(課税留保金額)に対し、その金額に応じて10%15%20%の特別税率による法人税を課すこととされています(法67)

 

Q29 グループ法人税制の概要について教えてください

 

A29 完全支配関係(法2十二の七の六)がある内国法人間で一定の資産(譲渡損益調整資産)を譲渡した場合には、その譲渡損益調整資産に係る譲渡損益の計上を繰り延べ、譲受法人において譲渡、償却等の事由が生じたとき又は譲渡法人と譲受法人との間で完全支配関係がなくなったとき等にその繰り延べた譲渡損益の全部又は一部を取り戻すという制度です(6113)

 

【コラム】 持株会社化することの効果

複数の企業を一つの企業グループとして統制していくために、傘下の会社の株式を保有することで当該会社の活動を支配することを目的とする会社を持株会社といいます。

経営統合において従来から存在する合併制度の代替手段として持株会社が活用されるケースが増えています。すなわち、複数の企業が共同で持株会社を設立して、その持株会社の子会社となることで、同じ企業グループを形成して統合します。

具体的な手法としては、資産管理会社設立のほかに、会社分割や株式移転、株式交換により、持株会社化をすることが可能です。

オーナー族が支配している会社が複数ある場合には、持株会社を導入し、その後、持株会社の株式を承継者に移転することで、間接的に複数の会社の支配権を承継者に移転することが可能になり下記の経営面、税務面の効果も得られます。

 

【持株会社化による経営面及び税務面の効果】
 項 目 効果の内容
経営面 グループ経営と
事業運営の分離
・グループ経営機能が強化します。
・事業会社における意思決定機能が迅速になります。
・企業再編を促進することができます。
・経営資源の適正配分が可能となります。
各事業の

法人格分離

・各事業の経営成績が明確になります。
・個別事業の責任と権限が明確になります。
・各事業のリスクが他の事業に及ぼす影響を限定的にすることができます。
税務面 自社株評価 ・子会社株式を純資産価額で評価する場合に、利益蓄積である含み益を37%控除することにより、株価上昇抑制効果が期待できます。
 ()持株会社は保有資産に占める株式の割合が高くなるため、株式保有特定会社に該当するケースも想定されます。
株式保有特定会社に該当する場合には原則的に純資産価額により評価することになります。
受取配当等の
益金不算入
・配当計算期間を通じて完全支配関係がある完全子会社からの配当等を全額益金不算入とされるため、課税関係を発生させずに配当等を通じて完全子会社から完全親会社への資金の異動が可能となります。
組織再編税制 ・企業グループ間で組織再編を行った場合には、完全支配関係となるため、一定の要件を満たす場合には税制適格組織再編となり、課税関係を発生させずに資産・負債の移転等が可能となります。
グループ

法人税制

・完全支配関係となることで、グループ法人税制が適用され、グループ法人間での資産の移転に伴う課税が繰り延べられるため資産の譲渡や寄附が行いやすくなります。

 

 

法人税対応に係るチェックリスト(主要項目)

項          目
収益の税務
1 売上は自社の売上計上基準に基づいて計上しましたか。
2 棚卸資産の自家消費又は贈与した場合の処理は適正ですか。
3 受取配当金の益金不算入の計算は適正ですか。
4 受取配当等の益金不算入の規定を適用する際、関連法人株式等を保有するための負債利子の額は控除していますか。
5 子会社に対する貸付金利率が通常より低い場合は寄附金の検討をしましたか。
費用の税務
6 役員給与のうち損金不算入とすべきものがないかを確認しましたか。
7 役員に対する経済的利益も含めて過大給与か判定をしていますか。
8 非常勤役員を使用人兼務役員としていませんか。
9 役員に対する渡切交際費は給与としていますか。
10 保険の契約内容を確認して資産に計上すべきものを検討しましたか。
11 役員又は使用人の大部分が同族関係者である場合の保険料等は給与となることを検討しましたか。
12 未払の寄附金を損金算入していませんか。
13 政治団体に対する寄附金を交際費等又は会費として処理していませんか。
14 交際費以外の科目に交際費等に該当するものはありませんか。
15 接待飲食費用の損金算入は適正ですか。
16 1人5,000円以下の飲食費用の損金算入は適正ですか。
17 控除対象外消費税のうち、交際費に係るものの有無を検討しましたか。
18 固定資産等の取得価額に交際費等がないか確認しましたか。
19 仮払金、未払金であっても交際費等の額に含めましたか。
20 創業記念日等の祝賀会に招待された際の祝金を交際費等としましたか。
21 得意先等を海外旅行へ招待した場合に、案内のため同行した役員又は使用人の費用は交際費等としましたか。
22 ゴルフに関するプレー代、会費等の費用を交際費等にしていますか。
損失の税務
23 売れ残り季節商品というだけで評価損を計上していませんか。
24 時価の低下の事実がないのに1年以上遊休状態ということで評価損を計上していませんか。
引当金
25 貸倒引当金について、一括評価の対象となる貸金の範囲は正しいですか。特に、実質的に債権と見られないものについて検討しましたか。
資産の税務
26 棚卸資産の評価方法は適正ですか。
27 積送品、試送品、未着品、社外在庫品等の計上は適正ですか。
28 減価償却資産の事業供用日は適正ですか。
29 土地付建物を一括購入した場合に建物のみを減価償却の対象としていますか。
30 土地とともに取得した中古建物をおおむね1年以内に取壊した場合は、建物の帳簿価額と取壊し費用は土地の取得価額としていますか。
31 他人の建物附属設備についてした造作はその建物附属設備の耐用年数を適用していますか。
32 カーテンは部屋ごとに合計した上で少額減価償却資産の判定をしましたか。
33 事業の用に供していないにもかかわらず10万円未満であるとして損金に算入していませんか。
34 少額減価償却資産は事業の用に供した事業年度で減価償却しますが、翌期以降に一時の損金としていませんか。
35 設立時など事業年度の月数が11か月以下となる場合は、一括償却資産に係る損金算入限度額を単純に3分の1していませんか。
36 取得価格20万円未満のものについて一括償却資産の損金算入を検討しましたか。
37 一括償却資産を除却した場合でも、3年償却を続けていますか。
38 取得価額30万円未満のものについて、少額減価償却資産の損金算入及び限度額の検討をしましたか。また明細書を作成しましたか。
39 機械及び装置を制御する電子計算機はその機械及び装置の耐用年数を適用していますか。
40 中古資産を取得し、改良した費用は新品を取得する価額の50%超の場合には、法定耐用年数を適用していますか。
41 修繕費や消耗品費に資本的支出に該当するものはありませんか。
42 契約書を確認して、所有権移転外リース取引については、適正に処理しましたか。
43 繰延資産について期中計上の適否を検討しましたか。
44 有効期間がないレジャークラブの入会金を償却していませんか。
45 得意先に自社製品名を表示した自動車を贈与した場合は、繰延資産として処理していますか。
税額計算等
46 特定同族会社の判定で同族関係者の続柄等について検討しましたか。
47 留保金課税の対象法人ではありませんか。
48 税額計算で土地の譲渡等がある場合の特別税率について検討しましたか。
49 税額計算で適用税率は確認しましたか。軽減税率の適用対象法人ですか。


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